3月の聖句

学内教職員向けのメッセージです。

3月の聖句

「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」
ヨハネによる福音書　８：３２

佐藤優さんという著作家の講演を数年前に聞きました。全国聖書科研修会が広島女学院で開かれた時の特別講師が佐藤氏でした。同時に広島女学院の中高の生徒たちへ向けての２回の講演にも出席しました。中学生に向けての１時間の講演で、佐藤氏はご自身のお母さんのことを話しておられました。
沖縄出身の彼女はひめゆり学徒隊の一員として、沖縄戦の最後はガマの中に人々と閉じこもり、そこで集団自決を迫られた人々が、自らの命を絶っていく場面に居合わせたそうです。戦前からの徹底した教育によって、米国兵を悪魔のような残忍な群れと信じ込み、自分たちの使命は、命を差し出して忠節を貫くこと、残された選択は自決だけであると思い込んでいる状況でした。
ガマの中で、自らの命だけでなく、自分の家族の命をも奪っていくような、想像を絶した狂気の状況の中で、彼女に死を思いとどまらせたのは、彼女の心の中にあったある人の言葉であったそうです。軍国教育がすべてを支配する中にあっても、その人は、本当のことを見ぬくことの大切さをいつも語り、当時の状況を、日本という限られた視野を超えたところから見つめる視点の大切さを教えてくれたそうです。
まさに、「真理はあなたたちを自由にする」という聖書の言葉の具体的な例であったそうです。コロナによって、これからの世界のパラダイムは大きく変えられていくことでしょう。民主主義の限界が叫ばれて、世界中に全体主義の不穏な足音が響き始めているようにも感じます。そんな中で、キリスト教学校で過ごす若い人々の心に、真理を知り、目の前の状況に支配されるのではなく、自由に人間の尊厳、平和を求める心を育てていけることを、いっそう強く願う日々です。（宗教主任）