5月の聖句

学内教職員向けのメッセージです。

5月の聖句

「いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい」　（マルコによる福音書9章35節）

ずいぶん前になりますが、NHK「課外授業ようこそ先輩」という番組で、フィギュアスケーターの荒川静香選手が、仙台の母校で生徒達に特別授業をした様子が放映されました。授業内容は「スケートリレー」で、チームごとのタイムを競い合うものです。２回測定しましたが、チームの順位は変わりません。しかし荒川選手が注目したのは順位ではなく、１回目と２回目のタイムの縮み方でした。最もタイムの縮みが少なかったチームは、自分が上手なことをアピールし合いながら個々に練習し、未経験者も一人で練習し、周りからの応援も殆どありませんでした。一方、最もタイムの縮みが大きかったチームは、マンツーマンで上手な子が未経験者を教え、互いに声を掛け合いながら練習をしていました。このチームのタイム順位は一番ではありませんでしたが、一番幸せそうな表情をしているのは明らかでした。
荒川選手は、世界選手権９位に落ち込んだところからオリンピック金メダルへと辿り着いた要因を「一人で滑っているのだけれど、一人で滑っているのではないと思えるようになった」からだとし、「自分のためだったらとっくに辞められたけど、人のためだったら辞められないと思った」と振り返っておられます。誰かのためにすることが自分の力を最大限に引き出してくれるし、そこに人の本当の幸せがあることを荒川選手はご自身の体験からこども達に伝えていました。
「いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい」
というイエスの言葉の意味合いもそこにあると思います。この言葉は、弟子達が「誰が一番偉いか」と論じ合っていた時に語られた言葉です。一番になる幸せとはまた違う、誰かのために生きる幸せの価値世界があることを示したのがイエスでした。イエスのように「勝ち」だけではない「価値」を共に見出していくことが、キリスト教主義教育の一つなのかもしれません。
（宗教部主任）