共愛学園高等学校
共愛学園
共愛学園

6月の聖句

学内教職員向けのメッセージです。

6月の聖句

「聞くのに早く、話すのに遅く、また怒るのに遅いようにしなさい」
 (ヤコブの手紙1章19節)

京都大学名誉教授で心理学者の故河合隼雄さんは、「心のなかの勝負は51対49で決着がついていることが多い」と分析されました。人間は0か100かではなく、51対49という微妙な気持ちの割合のなかで決定していることが多いということです。河合さんは、よく中高生の相談にも乗っていました。表面的には「助けを借りない」という反抗的で頑なな態度が表されていても、その心の内実は「助けを借りるものか」という気持ちと「助けを借りたい」という気持ちとが51対49というきわどい割合のなかに置かれていることが多かったようです。ですが、たとえ51対49の割合でも、一方の気持ちが勝つとそれだけが表面に現れるので、自分も相手も100対0のように意識してしまいます。ですので、意識的には片方が非常に強く主張されますが、その内実はそれほど一方的ではないということでした。そして、気持ちの割合が50対50に近づいてくると、それに耐えかねたり、何とかごまかしたりするためにより強い反抗的な態度が現れ、49対51の割合になってようやく「何とか助けて欲しい」という気持ちが少しずつ吐露されていくようです。以上の分析から河合さんは、「このあたりの感じがつかめてくると『お前なんかに話をするものか』などと言われても案外落ち着いていられる。ともかく、寄り添う側は勝負を焦ることはない」と主張されていました。
「聞くのに早く、話すのに遅く、また怒るのに遅いようにしなさい」と聖書は教えています。話すな、怒るなということではありません。イエスもたくさん話しましたし、時には怒りました。でも先ずは焦らずに相手の気持ちや事情を聞くことで、自分の話すべき言葉や怒り方が整えられていくことを大切にされたのがイエスでした。それは、51対49の割合で沈んでしまった相手の心の内を聞き逃さず受け止めようとするイエスのかかわり方であり、すでに教職員の皆様が生徒達との関わりの中で実現されているキリスト教主義教育の姿であると思います。
(宗教部主任)

前の記事:5月の聖句   次の記事:7月の聖句