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聖書
- 2025.03.01
3月の聖句
学内教職員向けのメッセージです。
3月の聖句
「鉄は鉄をもって研磨する。人はその友によって研磨される。」(箴言27章17節)
「矛と盾を売る商人がいた。盾を手にして『これはいかなる矛もはねかえす盾である』と述べた。次いで矛を示して『これはあらゆる盾を貫き通す矛である』と自賛した。そこで客が『その矛で盾を突いたらどうなる?』と訊くと、商人は答えに窮した」。言わずと知れた『韓非子』の「矛盾」という古諺です。韓非がこの逸話を記したのは戦国時代でした。一国を安定的に統治し、侵略に耐える強国とするために「賢者が支配すべきか、強者が支配すべきか」…そのような議論の中で、韓非は「矛盾」の例を挙げています。内田樹さん(神戸女学院大学名誉教授)は、「韓非があえて矛盾の喩えを引いたのは、『賢者が支配すべきか、強者が支配すべきか』の議論は結論を得ぬままにエンドレスに続けられなければならない、と考えていたからではないか」と述べています。逆に言いますと、「矛か盾か」、「賢者か、強者か」という命題のなかで、どちらかが「正解」と決めて思考と葛藤を停止してしまうことが、国の安定的な統治と発展を妨げてしまうことを示唆しているのかもしれません。
今月の聖句は、知恵に優れ、古代イスラエルに黄金時代をもたらしたソロモン王の格言とされています。絶大な地位と権力を持ったソロモンが大切にしていたのは、自分を研磨してくれる「友」の存在です。自分と忖度なく議論してぶつかってくれる存在こそ、ソロモンは一国を統治する上で重要視していたようです。自らの地位と経験と考え方に安住して、視野が狭くなる危うさを感じていたからでした。けれどもソロモンは、段々聞く耳を持たなくなり、王国は衰退していきます。
大人になるにつれ、自分と忖度なく議論し、ぶつかってくれる存在が希薄になっていくように感じます。「あなたがたを友と呼ぶ」(ヨハネ福音書15章15節)と言われるイエスは、あちらこちらで大人相手に論争を繰り広げました。こちらが「いかなる矛をもはねかえす盾」と主張すれば、イエスは「あらゆる盾を貫き通す矛」として立ち塞がります。そのようにして自分を研磨してくれる「友」の言葉に出会える礼拝の時間を、これからも大切にしていきたいと願います。(宗教部主任)